リラックスした雰囲気のなかで誰かと話すだけで、いら立っていた気分がおさまったり、落ち込んでいた気持ちが少し元気になったりすることは少なくない。
会社でイヤなことがあると、そのまま家に帰る気にもなれず、「いきつけの酒場」に寄っていこうか・・・と、なる。これは、いい習慣だ。
店の人や常連仲間に仕事のグチを聞いてもらいたいわけではない。ただ会社のしがらみのない人たちととりとめのない話をしているだけで、ささくれていた気持ちがちょっとは落ち着く、穏やかな自分になれる。
仕事で苦労している人の話を聞いて、「ああ、この人もたいへんなんだ。やっぱりみんなつらいながらも、がんばっているんだなあ、私もばんばろう」と励まされることもある。
バカ話で大笑いして、すっきりと気分が腫れることもある。
こんなことを書くと、
「それじゃあ、家にまっすぐ帰ってくれば、私が話し相手になってあげるのに」
と思う主婦もいるだろうが、それは早トチリだ。もちろん、「妻と話をするのが、一番のストレス解消」という人もいるだろうが、実際にはそういう夫は少数派だ。
長年連れ添っているぶん、どうしても話題が偏ってくる。相手の趣味や考え方もわかっているので、「こちらがこういえば、こういう言葉が返ってくる」と、会話の流れも見えてくる。どのような話し方をしようとマンネリの会話になり、「ほっとする」ような癒しの効果はあまり期待できない。
もっといえば、ヘタに仕事のグチでもいおうものなら、「あなたなんか、まだ外で発散できる場があるからいいでしょうけど、私なんか・・・」と、ヤブ蛇になることもある。この危険度は、世の夫は誰でも肌身で感じているのであろう。
仲のよい夫婦を見ていると、あきれるぐらい話がつきない。いつも笑い声がひびく。お互いに、顔を見ると「ほっとする」、そういう気持ちなのであろう。
「この人とはリラックスして話ができる」・・・そういう人が身近にいる人は、自分を幸運と思ったほうがよい。「自分は幸運だ」と思って生きていれば、さらなる幸運が舞い込んでくることも、よくある話だ。
斉藤茂太 「あなたと会うとほっとする」といわれる人の共通点 p122
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