毎日新聞 2010年(平成22年)1月20日(水)
<学生時代の山田さんは将来を決めかねていた。確信のない選択が、今日につながっている>
自分という人間が出来上がっていない時期に、将来を決めることはムリだと思います。僕は結果として映画人になったけれども、映画の何たるかも分からず、本当に好きかどうかすら分からないまま、映画会社に就職した。それでよかったと、振り返って思います。
「大志を抱くな」と、若者に言うんです。大志のあり方ってことですが、どんな人間になりたいかという質問が、人格についてなら大いに野心を持つべきだと思う。でも職業のこととしか受け止められないとすれば、はなはだ貧しい。
(「男はつらいよ」の)寅さんはおいの満男に、迷ってるからこそ大学に行かなきゃいけない。勉強しながら考えるんだ、悩むために大学生活はあるんだと言う。大学が就職のためのプロセスでしかないのなら、とてつもない悲劇だと思う。若者が成熟しないまま社会にでることだからね。
※やまだ・ようじ 映画監督。54年松竹入社、61年「二階の他人」で監督デビュー。69年「男はつらいよ」シリーズ開始。「家族」「たそがれ清兵衛」などで、毎日映画コンクール・日本映画大賞を4度受賞。78歳。
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